「Y・ユーリスキのカード」 20cイギリス・ロンドン
(発表 2014.5)
今回ご紹介するのは「ユーリスキのカアド」である。
これは、戦前、ロンドンに駐留していた商社マン高島竹次郎氏の遺品であり、彼の手記と共にトランクから発見された物である。
手記によれば、昭和五年、氏はポーランドから来たY.ユーリスキという老学者と出会い、彼に誘われて秘密結社、「百合十字騎士団」に入会したという。
百合十字騎士団は、博愛主義の結社であるというが、詳細は不明で、ただ、「百合の信仰を共にする者」といわれている。百合は聖母のシンボルであるため聖母崇拝ではないか、という説もあるが、矛盾する記述も見られ、疑問が残る。
彼らは「キマシ塔」を建築することが世界平和につながると考えていたようであるが、このキマシ塔がどのような建築物なのかは判然としていない。ただ、どうやら、実際の建築物ではなく、何かの比喩、もしかすると何かの精神修養の階梯の象徴なのではないかと思われる。
さて、手記によれば、カードはユーリスキ氏からのもので、政情不安のために帰国する高島氏に対し、互いに己のサインを入れたカードを交換することで、再会を約束したものであるという。
両者は厚い友情で結ばれていたようであるが、戦後、彼らが無事再会できたかについては、分かっていない。