【お絵かき講座】キャラ絵の描き方基礎~第五回素体基礎Ⅲ腕部
キャラ絵の描き方基礎(頭の固い人向け)第五回 素体基礎Ⅲ~腕部
素体基礎は広文メソッドの素体(アタリ)の描き方をお伝えするというものですが、今日が3回目。今回の内容は、腕の描き方です。おっと、素体が何なのか分からない方については第二回の講義録をご覧ください。
それでは、さっそく始めていきます。
今回の目標
さて、前回、前々回と同じく、最初に完成形をお見せしましょう。左図がスタートで右図がゴールです。なお、スペースの関係で脚の描写は省きます。
腕のパーツを把握しよう
腕の描き方は、第四回の脚部と同じくパーツを配置して、その間をつなぐ、という方法を取ります。パーツは簡単で、肩、肘、手首の三つからなり、今回は全てが球体です。(今回、掌はやりません)下図に大きさが示してありますが、あくまで目安です。個人の好みや、キャラクターの特徴で変化していきますから、参考値と考えて頂ければと思います。なお、この掌は記号ですから、「この形を描け」というものではありません。お好きなように描いてください。
パーツのつなぎ方
これらのパーツのつなぎ方も、脚部とほとんど同じです。球同士を接線で結んで、筒に嵌っている様に切り口を描く、ということです。肩と手首球はちょうど中間まで嵌りますが、肘パーツには、浅く3分の1ほどはまります。とはいえ、3分の1は重要な数値ではなく「だいたいこれくらい」という目安なので気にしないでください。分かりにくければ、肩や手首と同じように中間にしておいてもらってもかまいません。それから、筒の切り口は重要ですので是非、描いておいてください。
切り口が重要な理由は第四回でご説明しましたが、もう一度再掲しておきましょう。切り口で「角度と方向」が決まってしまうためです。
パーツの配置方法
さて、後はパーツを配置する場所ですが、腕は自由度が非常に高く、肩は別として、ほとんど「好きなところに置ける」という状態です。とは言え、何か基準となるものが必要ですから、自然に手をおろした時の図を出しておきましょう。これで肩の球の位置(&大きさ)と、腕の長さが分かると思います。
しかし、図示してみたものの、ポーズがついたキャラを描く場合、長さを正確にはかろうというのは無理です。ですから、自分の好みで描く方が建設的です。重要なのは上腕と前腕の長さの比で、肩の球まで入れると「上腕が少し長め」という事で、それは覚えておいてください。
さて、問題は実際の描き方ですが、予めポーズを決めていて、「ここにパーツを置きたい」と分かっている状態、つまり、今回の講座のように、「完成図」が分かっている状態だと、下図で示すように図形を描いて行けば、比較的簡単に場所を導くことが出来るでしょう。
ちなみに、ここらは応用概論でより詳しく行います。
……はてさて、困ってしまいました。上の図をもってゴールになってしまったのです。今回はこれでおしまい。と、言いたいところなのですが、さすがに時間があまり過ぎです。そこで、せっかくですから、ついでに「具体的イメージがない場合の、パーツ配置を考える便利な方法」をお教えしておきましょう。
TIPS パーツ配置を考える方法
それは「手首から描く」という方法なのですが、広文メソッド独自の方法ではなく、広く一般に流布している方法ですので、知っておられる方も多いと思います。
ともあれ、その方法を行うために、前提として「腕の可動範囲」を知っておきましょう。腕を伸ばした状態で腕が動く範囲は以下のとおりです。
図のとおり、肩からぐるっと半球が描ける、というまさに広大な範囲です。実際には腕は曲げられるので更に可動範囲は広がり、また、この半球内部のどこにでも掌(及び手首)が位置できます。
そう。掌、もしくは手首が重要なのです。「配置場所を知る便利な方法」とは、まず、この半球の中に手と手首を配置します。その後で、そこに手首が位置「できる」ように、肘と肩の場所を決めるのです。逆算するんですね。
例えば、物を持った絵などを描く時に、そして、そのような絵を見る時にまず気にするのは手の位置であって、肘の場所ではないですから、これは逆算と言っても理にかなった方法です。
なお、想像で位置を決めにくい場合、鏡の前でそのポーズをして頂くか、デッサン人形にそのポーズを取らせてみる事です。ちなみに、「関節(球)同士の距離は、見た目に短くなることはあっても、伸びることはない」ということを意識しておいてください。当たり前のことのように聞こえますが、この原則を守るだけでも、けっこう様になります。
肩は可動する
ところで、ここで皆さんにちょっと厄介な話をしないといけません。残念ながら、我々人間の肩は、縦横無尽に動きます。そんなイメージないけど、という方はその場でよいので、畳水練ではないですが、肩に意識をおいて平泳ぎの真似をしてみてください。肩が意外に動き回ることを感じ取れるかと思います。
つまり、この素体としては、「肩の球が動く」ということです。ちょいと図示をしてみました。普通の状態の位置から、上下前後に動きます。
さて、動くのは分かったとして、絵を描く時にはどういう場合に動くのか、が重要な問題ですね。……しかし、実は肩の可動とは「動かそうと思ったら意志に応じて動く、同じポーズでも力を入れるのと入れないのでは動きが違う」という厄介なものです。つまり、共通の理論がないのです。しかも感情を表すマンプ(漫画符号)としても使われるほどですから、ポーズを鏡の前でとったり、他の人の作例を見てマンプとしての表現を覚える、という方法が必要になってきます。残念なことにこの場合、デッサン人形は役に立ちません。。
ただ、特に力を入れていない状態で、肘が肩より上がっていなかったら、ここらのことはあまり考えないで良いでしょう。
まとめ~描く手順を考えよう
さて、今まで腕の描写方法を見てきました。本来、今回の講義は補助図形を描くとパーツの配置がしやすい、までであり、以降の「配置場所を考える、便利な方法」からは、応用編ですので、「ふーん、そうなのかー」程度で大丈夫です。補助図形の件も含めて、応用概論で詳しくやります。とはいえ、ちょっと試してみるのも良いかもしれません。
では、ここからは、その実践においての手順の話です。「描きたいポーズとパーツの位置が分かっている」場合においては、鏡やデッサン人形でポーズを確認しつつ、そこに図形を見出し、紙面にその図形(補助図形)を描く、という順序になるかと思います。
「パーツの配置場所のイメージがない」場合、さきほどの「配置の場所を決める方法」を用いて手首の位置を決める、というのが最初に来ます。その後、イメージで肘、肩の位置を描いてみて、違和感があったら鏡やデッサン人形を使って修正(上の補助図形も活用しましょう)、という手順が素直でしょう。まあ、鏡やデッサン人形はいつみてもいいのですが。
なお、上記二つはイラストや漫画を完成させる時を想定した手順です。落書きをする場合に、これらの手順は関係ありません。適当に、楽しく書くのが第一だと思います。
ちょっとした事~前腕は斜めについている
そして、最後にちょっとしたことを言って、今回の講義を終えましょう。前腕部の事なのですが、これは上腕に対してまっすぐついているのではなく、下の図のように斜めについています。
ただ、そうは言っても実際の描写の時にこれを意識することはあまりないと思います。想像で書いて変だと思ったら鏡を見て修正出来てしまうので。まあ、知識として知っておいてください。
それでは、今日の講義はこれまで。次回は16日、素体基礎の最終回、頭部+αでお会いしましょう。