【お絵かき講座】キャラ絵の描き方基礎~第十四回下書き概論Ⅱ着衣
キャラ絵の描き方基礎(頭の固い人向け)第十四回 下書き概論Ⅱ~着衣
「キャラの描き方基礎」、本日が第十四回目です。前回から、アタリから下書きを描く時のポイントをお伝えしていますが、今回は服を着た状態、すなわち着衣状態を取り扱います。
ただ、今回の内容は、前回で描きました裸体の下書きをもとに服を描いていく……という趣向ではなく、アタリから直接、着衣の下書きをしてしまおうというものです。
もちろん本来は、裸体から描くのが筋でしょうし、大体の参考書もそれを勧めています。ですが、それだと比較的描きやすくて、私が特に説明する必要がないのです。そこで今回は、アタリから直接衣服を描いていくという方法を取ります。もちろん、他の参考書がオススメしていないだけあって、正確性は若干劣りますが、裸体を描く手間を省略できる利点があります。
ところで、最終回である第十五回目は「総論」として、私がただしゃべくるだけのまとめになります(第一回オリエンテーションの逆なわけです)ので、内容があるものについては実質上、今日が最終回になります。
それでは、さっそく始めていきましょう。
はじめに~服の構造を知ろう
……ええと。上記偉そうなことを申しあげましたが、始めに正直に申し上げておきますと、私は、服を描くのがそんなに得意ではありません。ですが、裸体ときて、着衣をしないと何とも中途半端に終わってしまうので、皆さんと一緒に勉強するつもりでやらせて頂きます。おそらく、今回はそういう内容の専門書を読まれた方が早いと思いますが。。
とりあえず、ああ、苦労しているな、と思いながらお聴きください。
また、今回の講義の範囲に関してですが、限られたページ数の中で、無数にあると思われる衣類全ての描き方を説明することは不可能ですから、この時期、需要の多いと思われる「女子高生の制服(夏服)」に的をしぼって、描き方のポイントをお伝えしようと思います。
おっと、ポイントを説明する前に、まずは制服の構造の確認からいきましょう。制服と言っても、たくさん種類がありますからね。今回は半そでシャツにプリーツスカートでいきます。
ちなみに、資料がなかった関係で、スカートのポケットについてはこれを鵜呑みにしてはいけません。
OKでしょうか? では、内容に入っていきましょう。
頭部と頸部を描こう
衣類の描き方なのに、最初に行うのは頭と頸の下書きです。なんとも遠回りですが、それには理由があります。ともあれ、下の図をご覧ください。
図にもありますが、顔を最初に描いてしまう事で、素体のバランスが確認しやすくなるのです。顔に比例して素体が小さければ、下書き線は素体を膨らませるように引かれ、あるいは素体のガタイが良すぎれば、下書き線は素体を削るようにして引かれるでしょう。手足の長短などに気付けば、そこで素体の修正もできます。
また、頸部の太さは、服の襟の大きさに関係してきます。頸部を先に描くことで、首が細いのにぶかぶかな襟だったり、あるいは逆に首を締め上げるような襟を描いてしまう事を防げるという訳です。
このような利点がありますので、頭部と頸部を先に描くのです。
もちろん、これは慣れの問題でもありますから、完成のイメージを把握できる人は、どこから描いても良いでしょう。
素体をマネキン化しよう
第十三回でも言及しましたが、素体の弱点は胸から肩にかけての部分です。
そこで、それを改造してやる必要があります。どのようにするかといえば、「縫製用(立体裁断用)のマネキン」ぽい形にしてやるのです。
なお、人により、緑色の線を引かない方が描きやすい場合があります。ココらはご自由にお願いします。
襟を描こう
さて、上で出来たマネキンに服を着せていきましょう。どこから描いても良いのですが、襟からいきます。
肩から袖を描こう
続いては、肩から袖です。
コツは、とにかく「実物に当たる(写真でも可)」ということです。そして、その際、アタリと実物に齟齬が生じていたら、信じるべきは実物の方です。
シャツを完成させよう
それでは、シャツを完成させましょう。
スカートを描こう
つづいて、スカートを描きます。
小物を描いて完成
あとは、小物を描き、また、肌の露出部分を描きます。露出部分は前回(第十三回)と全く同じです。
さて、これで着衣の人物を描き終えました。全体を通して、「とにかく実物や写真を観察し、参照する」という事が重要です。
そのポイントを押さえておけば、動きがついた状態にも対応できるでしょうし、また、色々な服も描けるでしょう。
この参照するという行為は、一見、面倒くさいように感じますが、実際には、複雑な皺を頭の中で何時間も考えるより、実物や写真を見た方が楽で早いものです。また、洋服は意外と似たような構造の物が多いので、そのもの、例えば今回で言えば女子高生の制服がなくても、普通のカッターシャツが参考になります。また、写真ということでいえば、意外なところでは、カタログなどが役に立つでしょう。
おっと、念のため。参照というのは、構造を知る行為です。トレースという意味ではないですからね。他者の写真のトレースは、特に許しがない場合、公開作品では御法度です。
さて、かくして十四回目の講義はこれで終わりになります。
素体(アタリ)をえんえんやっておいて、下書きは2回で終わるというのはアンバランスな感じなのですが、広文メソッドというのは素体の描き方が主ですので、これで、何とかご容赦願いたいところです。
また、下書きからペン入れというのは、どのようにしても個性が出ますので、私の個性をお伝えしても……というところです。
次回の講義ですが、講義の最初でお伝えした通り、今回で「描き方の授業」は終わりになりますので、第一回のオリエンテーションと同じように、私が愚にもつかぬことをだらだら喋るという内容になります。
それでは、お暇でしたら次の講義でお会いしましょう。
……おっと、二つほど忘れてた。
まずは、第四回での正座の話です。「太ももと膝下の筒が重なってしまうが、それは問題ない」ということをお伝えしていたと思います。それをお示ししましょう。問題ない理由は、正座をすると、太ももと膝下は潰れてその形が変わるからなのです。
それから、男の素体の話を少ししましょう。第二回で言及したかと思いますが、男性を描くための男性型素体というのがありまして、それは下の図のようになっています。
女性型との違いは、肩幅を少し大きくして胸郭パーツを台形にし、くびれを弱めたという点だけですね。男女の体つきの違いは、細かく考えれば沢山あるものの、それを反映して複雑に変わっても描きにくくなるだけなので、このぐらいの変化です。なお、肩幅を大きくする代わりに、骨盤を大きくしないというやり方でも、男性っぽくなるでしょう。
もちろん、これはあくまで標準素体の話なので、筋肉隆々で肩幅が大きいキャラを描きたい場合や、逆に華奢なキャラを描きたい場合等でさまざまに変化します。
キャラクターというのは実に千差万別です。
キャラ絵を描きたいと思った時、それがイラストであれ漫画であれ、心の裡にあるであろう魅力的な世界観を伝えるためには、画一的なキャラクターばかりではなく、特徴のあるキャラクターを描いていく必要があります。
広文メソッドは、あくまで一つの目安にすぎません。描いているうちに、こうすればいいな、とかこう描いた方がイカす、と思えばどんどんアレンジしていくべきです。そして、「自分流」のアタリや、キャラの描き方を見つけられると良いかと思います。
……最終回みたいなこと言いましたけど、一応、あと一講あるんじゃよ。