洞田創研究室

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【お絵かき講座】キャラ絵の描き方基礎~第十五回(最終回)総論

キャラ絵の描き方基礎(頭の固い人向け)第十五回(最終回) 総論

 

 2015年度前期、館林大学教養共通講座「キャラの描き方基礎」、本日が最終回の第十五回目です。
 本来は7月中に終わっているはずでしたが、休講やらなんやらがあり、ここまでずれ込んでしまいました。皆さん、お疲れ様でした。先日のご案内のとおり、内容は前回で終わっておりまして、今回は私が愚にもつかないことをただ喋るだけ、と言う内容です

 

 

 


これまで~復習 我々は何を描いてきたのか?

 さて、十五も回を重ねてきましたが、私たちが「何を描いてきたのか」あるいは「何を練習してきたのか」を確認するために、講義を振り返ってみましょう。
下をご覧ください。これが、全十五回の内容です

 

概要紹介(全2回)
内容:授業の概要の説明と、広文メソッドを紹介した。
第一回  オリエンテーション
第二回  アタリから始めよう


素体基礎(全4回)
内容:棒立ちにおける、素体の描き方の基礎を紹介した。
第三回  素体基礎Ⅰ 胴体
第四回  素体基礎Ⅱ 脚部
第五回  素体基礎Ⅲ 腕部
第六回  素体基礎Ⅳ 頭部+α


応用概論(全4回+補講2回)
 内容:ポーズを付けた場合における、素体の描き方を紹介した、また、概論本編では説明しきれない、色々なポーズをとった場合に必要になる描写方と考え方を補講で補った。
第七回  応用概論Ⅰ 立ち絵
第八回  応用概論Ⅱ フカン(俯瞰)
第九回  補講Ⅰ 胴の動き
第十回  応用概論Ⅲ 後姿
第十一回 補講Ⅱ 肩まわり
第十二回 応用概論Ⅳ アオリ(煽り)


下書き概論(全2回)
内容:アタリをペン入れ一歩前の下書きにする際の、ポイントを紹介した。
第十三回 下書き概論Ⅰ 裸体
第十四回 下書き概論Ⅱ 着衣


総論(全1回)
 内容:講師デブメガネが講座を適当に総括する。
第十五回 総論

 

 とまあ、振り返ってみますと、内容はほぼアタリの描き方、という訳ですね。この講座は広文メソッドを用い、そのメソッドの肝は「計算して描くアタリの描き方」なわけですから、こうなるのもやむ終えないところです。

 

 さて、話は変わりますが、皆さんが漫画やアニメ風のキャラクターの描き方を習得しようとした時に、参考書やあるいは絵に詳しい友人から、「絵は、平面としてではなく立体として考えるんだ」という事を読んだり聞いたりした、そういう経験を持っておられる方は結構多いのではないでしょうか。かくいう私もそうでした。

 

そして、その時に「立体を考えるってなんだ? そうは言ったってどうすればいいんだ?」となった方、これもまた多いでしょう。たいていの場合、そうなります。しかし、思い出してみてください。この講座でえんえん、「箱を描き(考え)続ける」という一種の苦行をしてきましたね? 箱を描くというのは奥行きを描くことですから、とどのつまり、立体を考えるということです。

 

 つまり、私たちは「立体的にキャラクターを描く」と言う事を、十四回、半年にもわたってやってきたのです。皆さんは、意識して、または意識してはいなくても自然に立体的な考え方が出来るようになってきたのではないかと思います。今後、広文メソッドの素体を使うか使わないかは別として、その立体的な物の見方は、一つの糧となるでしょう。(遠い目)

 

 


これから~何をしていけばよいのか

 「これまで」をお話ししたので、「これから」も、少しお話ししましょう。講義名が物語っているように、今までやってきたのは、キャラ絵の描き方の「基礎」です。基礎であるという事は、皆さんは、この段階からさらに進まなくてはなりません。
第一回で、「一般的な人間がたどる、絵の発達過程」というのをお伝えしましたが、それをここでもう一度見てみましょう

 

1 一方向からの顔、またはバストアップ(胸から上)が描ける


 一方向からの全身像が描ける(立ち絵)


3 ある程度の簡単な構図で、立体的に全身像が描ける


4 ある程度複雑な構図でも、立体的に描ける

 

 この講座は、1や2の方を対象に、3に到達することを目指したものです。4ではないわけですね。そこで、これからは4を目指していくことになります。


 この4の目指す学習方法ですが、3の段階からは、もはやすべてが「参考になる教材」になります。例えば、「絵の練習としてのトレースは、線を追うだけだから駄目だ」とか、「模写をやっても意味なんてないよ」ということを考える必要はありません。
 皆さんは、「立体的に考える」術を学びました。モノを立体的に考えることができるならば、「ただ線を追うだけ」ではなく、「どのような線があれば立体と見えるのか、どのような線が躍動を伝えるのか」等々を考えてトレースや模写をすることができます。
 「アニメの絵の模写はだめだ、デフォルメの線だから」と考える必要もありません、「リアルでの、どの線がデフォルメされたのか」「効果的なデフォルメの仕方」「なぜ、たったこれだけの線で魅力的なのか」、等々を考える余裕が生まれるでしょう。皆さんは、もうその段階まで来ているのです。


また、立体の考え方を働かせれば、魅力的な絵を研究するだけでなく、単に外に出て散歩するだけでも勉強になります。自然や人工物は美しく、そこら中にあふれており、それら全てが絵描きにとって、描写の示唆を与える良い教師になり得ます
……お、コレは失敬。ルーミス先生みたいな事言いだしましたね。

 

 とにもかくにも、この講座の役目は今日で終わりですので、後は皆さんの工夫次第ということになりますが、「デブメガネは倒した。もっと強い奴に合いに行く……」ぐらいの意気込みを持って、画道に望んでいただけると幸いかと存じます。

 

 

 

 


終わりにかえて~我々は何故絵を描くのか

 大学生の方や、大学を卒業した方はおおかた経験あると思いますが、退官間際の教官は、唐突に変な話をしだすという、やむにやまれぬ生理的欲求を持っています。それは己と己の研究が年老いていく中、若さというモノを目の前にした時に起こる、承認欲求の根源的飢餓なのですが、私も、今からそれをやります

 

 人は、何故絵を描くのでしょうか?
 ラスコーの壁画を例にあげるまでもなく、有史以前から、人は絵を描いてきました。それは文字の発生より古く、また、それ自体、文字の母体ともなりました。
 絵を描くことは表現行為の一つです。表現とは気持ちをあらわすこと。我々が社会性を持つ動物である以上、何らかの意思を伝えようという意志を持ち、それを表現しようとすることは当然の行為でしょう。絵を描くというのは、誰かに向けて(もしくは自分に向けたものであれ)、想いを伝える行為であり、基本的欲求なのです

 

 ですから、それが神や王侯に向けた捧げものであれ、あるいはブルジョアパトロンや、単に発注者への応答であれ、もしくは、友人への友情や、家族へ向けた愛情を形にしたものであれ、一人もくもくと何かの情熱、あるいは狂気に支えられて形にしたものであれ、作品が作者の頭から手をとおして出た以上、まったくの無味無臭の物ではいられません。何らかの思想や思いが入っているものです

 

 で、あるならば。人の思いに優劣がつけられないように、本来は絵にも優劣を付ける必要はありません。当然、あなたがその作品に納得している限りにおいて、失敗の絵などは存在しません。

 

 ですが、「思いを他人に正確に伝えよう」と考える場合には、確かに多少の出来不出来が関係してくるでしょう。特に家族や仲間や、同質の集団以外に広く見て貰おうと考える場合には、表現には技量が必要になってきます。例えば、猿蟹合戦の絵本を作ろうとして、どうにも登場人物全員タヌキにしか見えないとなったら、壮大な内ゲバへと話の筋が変わってきます。

 

 私たちは「キャラ絵」を描きたいと思っていますし、この講座もそれを目的としていますから、そうなると、通常の場合は、女性キャラはなるべくなら美しく、またはかわいく、男性キャラはなるべくカッコよく描きたいと思うものです。ですが、それはあくまで「自分の思いを伝える、伝えたいことを伝える」ためにそのようにするものです。とはいえ、実際に描く場合、少なくともこのキャラクターはかわいい!とかカッコイイ!という思いを伝えようとするわけですから、その行為に、何らかの矛盾が生じることはありません。

 

 問題は、他の人に「ここはダメ、これはこうじゃないとダメ、こうした方が良い」と言われた時です。その話に納得すれば、それに従えばよいのですが、時に「自分の好きなスタイルや伝えたい気持ちが否定される」アドバイスであれば、それを真に受ける必要はありません。


 あなたの美術はあなたの物であり、あなたは、あなたの中にある、表現の王国の王として君臨しなければなりません。その玉座はあなたしか受け入れず、王冠はあなたの頭蓋にしか合わないのです。


 それに比べ、表現の種類や幅は無限大であるし、美術、そしてキャラ絵の基準はあいまいで、でたらめな世界です。それに、絵画技術の巧みさだけが、見る人の心を動かす要因ではありません。単に「自分にとっては好みじゃない」というだけのことに、整然とした理論をまとわせてくる遊説家は多く、あなたの王宮を尋ねてきた彼のその一言が、あなたの王国に波乱をもたらすこともあるでしょう。あなたはその中で献策を受け入れ、あるいははね付け、あなたの美術の王国を大胆かつ繊細に統治していかなければなりません。


……ちょっと硬いことを言いすぎましたね。ようは「自分が表現したいことへの、好きな気持ち」を忘れなければ、大丈夫ですよ。

 

 さて、第十五回目の講義も終わりの時間となりました。最後は若干、自分で自分の講座の存在否定をしたような気もしますが、取捨選択は皆さん一人一人の中にゆだねられているということです。皆さんの前には無限の可能性が開けています。この講座が少しでも、皆さんの絵の学習の足しになればと願っております。

 

それでは。またどこかで。

 

 

 

 

 

 

 

 

付録①~素体の最終形態

 特に脚部でマイナーチェンジを繰り返してきた素体ですが、改造する部分をパーツごとにお示ししていたため、全身像がどのようになったかが分かりにくかった方もいたかと思います。そこで、ここでお示ししておきましょう

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付録②~素体のアレンジ

 広文メソッドの標準素体を「理想的な形」と考えてはいけません。あくまで計算しやすさを重視した「キリの良い割合で出来た素体」です。そこで、いろんなアレンジができるよ、というのをお示ししましょう。

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続いては、全身のアレンジです。

 

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付録③~素体の練習法 エア工作

 メソッドの素体の概念を学習するにあたり、紙に書く以外で手っ取り早く、道具もいらず、効率の良い方法があります。ただし、人のいないところでやらないと恥ずかしい方法なのですが……それは、エア工作です。素体は立体模型として作れるので、その工作をエアでするのです。

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やってみると、意外と楽しいかもですよ。